■マリ・フルイド-Mari Lwyd

「樹上の銀」で失せし国をゆくウィルブラァンの前に立ちふさがる、恐ろしい馬の骸骨。小さい頃、ローランズ夫妻に連れて行かれたクリスマスのマリ・フルイドに、ブラァンはトラウマを残していて怯える。

「南ウェールズに行くと、古いクリスマスのしきたりでマリ・フルイドってのがある。灰色の牝馬って意味だよ」
実際にウェールズ南部グラモーガン州などの他いくつかの州では、12夜の時期になるとマリ・フルイド(葦毛の雌馬)が現れ、人々に親しまれている。
物語で登場する「マリ・フルイド」はねじくれ折れた角のある骨の馬である。堕落した一角獣というところか。
下顎に赤いリボンがついているというあたり、白い骨との対象が禍々しい。祭事のほうの装飾のリボンは馬具(おもがいと手綱)であるから、死神の馬を連想させる。

棒の先に馬の頭骨(そのままか、あるいは白い布を巻き付けた上にガラス壜底の目をつけ、リボンなどで装飾されている)がついている。裾の部分は持ち手がすっぽり隠れるように布で覆われ、下顎部分にも持ち手がついていて、口が開閉できるようになっている。カーディフの民俗博物館にいくつか展示されている。

棒ウマのあとには馬方と道化(パンチとジュディ)がつき、家々を訪ねる。
必ず家人は「言いまかされる」ことになっており、一行は家に押し入り「大暴れ」する。
日本で言うところの「獅子舞」や「なまはげ」といえば分かりやすいだろう。
ブラァンのトラウマになるくらいだから、相当はめを外した「大暴れ」なのかもしれない。
なんといっても造型が恐い。装飾をされていても、骨のままでもかなり無気味だ。

クリスマス・キャロルのルーツでもある、酒宴の回礼(Wassailing)に通じる、祝福をして廻る習慣の一つ。

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